ナノ粒子製造デバイス iLiNP-RoA

ナノ粒子製造デバイス iLiNP-RoA
脂質(又は両親媒性ポリマー)溶液と水からナノ粒子製剤を連続的に製造するためのマイクロ流路デバイスで、北海道大学において独自理論に基づき発明された立体交差を有する流路を採用しています。

iLiNP-RoAのRoAはRod of Asclepius(アスクレピオスの杖)の頭文字を取ったもので、アスクレピオスの杖は医療・医術の象徴として世界的に広く用いられているシンボルマークです。
iLiNP-RoAの流路形状がアスクレピオスの杖の「杖に絡む蛇」の形状に類似していること、及びiLiNP-RoAの医療・医薬への貢献を祈念して、弊社の看板商品となったiLiNP(innovative Lipid Nanoparticle Production device)にRoAを追加する名称としました。

※一般のお客様向けの販売開始時期、価格等については未定となっております(2023年9月時点)

1. iLiNP-RoAでナノ粒子が作られる原理

iLiNP-RoAでは先に上市したiLiNPと同じ原理でナノ粒子を形成します。
即ち、ナノ粒子膜を構成する脂質分子(又は両親媒性ポリマー)は、アルコールなどの有機溶媒中では溶解して分子1つ1つが分散しています。
この脂質分子溶液が流路デバイスの中で水の流れと出会うと、下流へ流れる間に、アルコールと水の液液界面でアルコールの希釈が始まります。

液液界面付近でアルコール濃度が低下すると、水に溶けにくい脂質分子は親水基を外側に向けて自己集合を開始します。更に希釈が進むと自己集合体は球状になり成長を止め安定化します。

自己集合体の成長が可能なアルコール濃度を持つ液液界面が維持される時間が長いほど、最終的に大きな粒子が得られます。
ただしその時間が長すぎると、今度は粒子が大きくなり過ぎてしまい、DDSに適するとされる300nm未満の粒子を得ることが困難になります。
また大量生産のために流速を上げると、混合が激しくなり液液界面の維持時間が短くなるため、期待よりも小さな粒子ができやすくなってしまいます。

iLiNP-RoAではこの液液界面の維持時間の調節を容易にし、比較的高い流速においても適切なサイズの粒子を得られやすいように流路形状を工夫しています。

2. iLiNP-RoAの特徴

iLiNP-RoAはマイクロ流路ミキサーで一般に用いられるY字型の流路形状と異なり、原料投入口から伸びる2つの流路が立体交差を繰り返す特徴的な形状を有しています。
この立体交差部分で2液が接触し、主に高流速側の流路にて2液の層流が形成されます。そして次の立体交差が出現するまでの間に粒子形成が進みます。
粒子形成時には2つの流路は分離されており、流路の離合集散や流路内の凹凸等で液液界面が乱されることがないため、比較的高流速の条件においても小粒径化が進みにくい仕組み【特徴1】になっています。
更にこのとき生じる有機溶媒層は比較的薄く、下流に向かうにつれてその大半が希釈され粒子形成が止まるため粒子が大きくなり過ぎることがありません【特徴2】

またiLiNP-RoAは流速変化により希釈スピードが変化するため、流速(流量)変化によって粒径コントロールしやすいiLiNPの特徴を受け継いでいます【特徴3】
更に、流路に狭窄部が無いため析出物や不純物混入に起因する流路詰まりが起こりにくい構造【特徴4】となっています。

グラフ:iLiNP-RoAを用いたpoly(A)内包LNPの試作。iLiNPと同様、総流量(TFR)を変化させることで平均粒径を大きく変化させることが比較的容易に可能。ナノ粒子の製造再現性にも優れている。

3. スケールアップ

iLiNPと同様に流量増加による生産量増加が可能です。
また「総流量制御による粒径調節」の特長を活かす場合は、流路デバイスの積層化及び並列化により、1枚当たりの最適流量を維持しつつデバイス増加数だけスケールアップが可能です。このとき、改めて製造条件の検討を一から行う必要はありません。また必要量に応じて製造設備(デバイス)を簡単に増減可能であるため製造設備投資が過剰となるリスクを低減できます。

4. 特許出願

特許出願人は北海道大学であり、ライラックファーマ株式会社は北海道大学より該当特許の使用許諾を得ています。

流路構造体およびこれを用いた自己組織化物質粒子の製造方法
国際出願番号:PCT/JP2023/004007
出願日:2023年2月7日 (優先日:2022年2月8日)

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