ナノ粒子製造デバイス iLiNP

ナノ粒子製造デバイス iLiNP
脂質(又は両親媒性ポリマー)溶液と水からナノ粒子製剤を連続的に製造するためのマイクロ流路デバイスで、独自理論に基づき設計したジグザグ流路を採用しています。

  • 平易な表現による技術概説(日本語版のみ)はこちらをご覧ください。

目次(クリックするとその項目に移動します)

  1. iLiNPでナノ粒子が作られる原理
  2. iLiNPの優位性
  3. 粒径調節の重要性
  4. 特許出願

 

1. iLiNPでナノ粒子が作られる原理

ナノ粒子膜を構成する脂質分子(又は両親媒性ポリマー)は、アルコールなどの有機溶媒中では溶解して分子1つ1つが分散しています。
この脂質分子溶液がiLiNPの中で水の流れと出会うと、下流へ流れる間に、アルコールと水の液液界面でアルコールの希釈が始まります。

例えばPOPCと呼ばれる脂質を用いた場合、界面付近でエタノール濃度が約80%を下回ると、水に溶けにくい脂質分子は親水基を外側に向けて自己集合を開始します。
更に希釈が進みエタノール濃度が約60%を下回ると自己集合体は球状になり成長を止め安定化します。

激しい混合を行わず(ゆっくり希釈を行い)、結果として自己集合体成長が可能な液液界面の環境が長時間維持される場合は、最終的に大きな粒子が得られます。
一方で、激しい混合を行い希釈を速やかに行った場合は、最終的に小さな粒子が得られます。

iLiNPは液体の流れの速さで希釈速度が変化しやすいように、流路形状を工夫しています。

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2. iLiNPの優位性

(1) バッチプロセスとの比較
iLiNPは従来のバッチプロセスと比べて多くの優位性を持っている、次世代のナノ粒子製造デバイスです。

〇製造工程を減らせる。
〇ナノ粒子製造の再現性が高くスケールアップも容易。
〇装置が小型で場所を取らない。
〇以上の結果として、ナノ粒子製剤の低コスト生産が可能。

 

(2) 他のマイクロ流路デバイスとの比較
iLiNPは1枚のデバイスで大粒径〜小粒径まで作り分けることができる、粒径調節のしやすさに特徴があります。

(i) 大粒径粒子の作製
他社技術が苦手とする大粒径粒子(一般的な脂質組成の場合 >80nm)の作製がiLiNPで容易なのは、原料液体の混合戦略が異なるためです。

他社技術(上図)では原料液体の全体を素早く混合する戦略を採用し、それに適した流路構造や推奨流量を設定しています。
結果として大量かつ安定したナノ粒子生産が可能となりますが、激しい混合により希釈が迅速に進むため大粒径化は原理的に苦手です。

一方、弊社のiLiNP(上図)では原料液体の全体を積極的に混ぜない戦略を採用し、それを実現可能な流路構造にしています。
結果として、脂質の自己集合が進む液液界面が長い時間維持され、比較的大粒径のものが得られます(一般的な脂質組成で <200nm、脂質組成の
工夫も入れると <500nm)

(ii) 小粒径粒子の作製
iLiNPを用いた小粒径粒子の作製については、
iLiNPのもう一つの特徴がポイントになります。

iLiNPで採用した流路構造では高流量条件において上図のように界面は維持されたまま流路内に局所渦(局所混合)が発生します。
その結果、高流量条件に限り局所的に希釈が促進されて、小粒径の粒子が得られます
その効率は非常に高く、他社技術の1/10程度の流量で他社技術製の
粒子より更に小さな粒子が得られる場合もあります。

流量によって流れの状態が変化する様子(水/エタノール系。エタノール側を色素で着色しています。)

以上の特性をまとめたのが上のグラフになります。
他社技術では素早い全体混合を重視しており、結果として比較的低い流量域から小粒径の粒子を作ることができます。その代わり流量変化に対する粒径変化の幅は狭くなっています。
iLiNPは全体混合が起こらないため、流量に対する粒径変化は他社技術よりも緩やかです。そこから流量を上げていくと次第に局所渦が生じて希釈が促進されるため、通常は混合希釈性能が飽和する流量域においても更に希釈が加速されます。結果として、流量変化に対する粒径変化の幅が大変広くなっています。

上のグラフは粒径調節の一例で、脂質の一種であるPOPCを用いたナノ粒子の粒径調節をiLiNPで行った例です。総流量の他、2つの原料液の流量比、原料液導入方法の変更などの送液条件調整だけで、10ナノメートル刻みで粒径分布をコントロールできました(ACS Omega 2018, 3, 5044-5051)※グラフの横軸は対数スケールになっています。

(3) 生産スケールアップ

iLiNPではナノ粒子生産のスケールアップも容易です。
流路形状が単純で加工が容易なため様々な素材を流路デバイスに使用できます。例えば流量増加によるスケールアップには送液圧力増加に耐えられるステンレス製デバイス(左上写真)やガラス製デバイスが使用できます。北海道大学と信越化学工業(株)のグループは石英ガラス製iLiNPを用いることで50mL/minまでの生産性を達成しています(Applied Materials Today 31 (2023) 101754)。
iLiNPの「流量制御による粒径調節」の特長を活かす場合は、流路デバイスの積層化及び並列化(中上写真、右上図)により、1枚当たりの最適流量を維持しつつデバイス増加数だけスケールアップが可能です。このとき、改めて製造条件の検討を一から行う必要はありません。また必要量に応じて製造設備(デバイス)を簡単に増減可能であるため製造設備投資が過剰となるリスクを低減できます。

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3. 粒径調節の重要性

最近の研究論文から、ナノ粒子製剤はその粒径が10ナノメートル単位で違うだけでその生物学的活性が変わりうることがわかってきました。

上記はあくまで一例であり、弊社技術の普及に従って今後も同様の知見が更に蓄積されると考えられます。
従来技術では手が出せなかった「粒径の精密な制御による効果効能の最大化」に、弊社のiLiNPデバイスを使えば誰よりも早く切り込むことができます。

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4. 特許
特許権利者は北海道大学であり、ライラックファーマ株式会社は北海道大学より該当特許の使用許諾を得ています。

Flow channel structure and lipid particle or micelle formation method using same.
日本特許番号:6942376
アメリカ特許番号:(登録手続き中)
カナダ特許番号 : 3059714
欧州特許番号:3610943
中国特許番号:110520214
台湾特許番号 : I774752
国際出願番号 : PCT/JP2018/015550 (
印に移行、審査中)
出願日 : 2018年4月13日 (優先日 : 2017年4月13日)

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